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    「対韓温情」姿勢を変えるときだ
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      【正論】
      東洋学園大学教授・櫻田淳 「対韓温情」姿勢を変えるときだ

      2012.8.27 03:12 (1/4ページ)韓国

       筆者は、20歳前後の頃、『ジャパニーズ・マインド』(ロバート・C・クリストファー著、徳山二郎訳、講談社、1983年)という書を読んだことがある。それは、80年代に日本の経済隆盛を受けて出された多くの「日本論」の一つであった。


       ≪竹島上陸に見える甘えの構造≫



       書中、若き日の筆者に強い印象を残したのは、「日本人のナショナリズムに一旦、火が点(つ)いたら、もはや手が付けられない」という趣旨の記述であった。この書が書かれた頃から30年の時間がたった今、「日本人のナショナリズムは、手が付けられない」という往時の観測が正しいのかと問いを発するのは、大事であろう。

       特に中国や韓国では、政治指導層にせよ一般国民にせよ、日本の「ナショナリズム」はどのようなものだとみられているのか。彼らは「怖い」とみているのか、「大したことがない」とみているか。これが今後の東アジア情勢を観察する材料にはなるであろう。

       というのも、李明博韓国大統領の竹島強行訪問には、日本の「ナショナリズム」を「大したことがない」と軽侮した判断が働いたであろうというのは、平凡に過ぎる観測だからである。しかしながら、他面において李大統領の判断は、「日本に絡んだ話であれば、どのような狼藉(ろうぜき)も容認される」という児戯に類する「甘えの心理」を反映したものでしかない。しかも、それは、日韓関係を傍観する他国の人々には異様なものと受け止められているかもしれない。

       過刻のロンドン五輪男子サッカー三位決定戦の日韓戦直後、韓国選手が竹島領有を主張する紙を掲げる「五輪憲章違反」行為に及んだけれども、それを英国メディアが「不作法」と非難したのは、その一例なのである。

       実際のところ、昔日、韓国は日本にとっては、政治上も経済上もマイナーな存在でしかなかった。故に、日本の対韓姿勢に反映されたのは、帝国主義時代の宗主国としての歳月と戦後の経済発展における格差に裏付けられた「温情主義」意識であり、植民地支配の記憶に絡む一種の「悔恨と贖罪(しょくざい)」意識であった。煎じ詰めれば、日本は常に「上から目線」で韓国に接してきたのであり、それ故にこそ、「泣く子」をあやすように韓国に相対してきたのである。


       ≪手加減した拳闘おしまいに≫

       韓国鉄鋼最大手ポスコの母体となった浦項製鉄所が象徴するように、日本は、資本や技術の面でさまざまな対韓援助を大々的に続けてきた。歴史認識や領土が絡む摩擦が生じた折に、日本が示した対韓姿勢とは、そうした色合いの濃いものであった。しかも、戦後、韓国が相手にしてきた日本とは、法制度、さらには資金や人員の面で対外政策展開にさまざまな制約を自ら課してきた国家のことである。喩(たと)えていえば、日本が韓国を相手にして半世紀近くも延々と続けてきたのは、「一切の手加減のない大人相手のボクシング」ではなく、「片手を縛ったままで手加減をした子供相手のボクシング」であった。

       しかし、韓国それ自体が既に「1人当たり年間国民所得2万ドル、人口5千万人」を実現した、「世界第7位の経済大国」であると自ら認識し、その立場を喧伝(けんでん)している以上、そうした旧来の対韓姿勢を続けることは、もはや時宜を得ないものになっている。

       近い将来、既に対外政策展開に際しての諸々の制約を外した「普通の国」に脱皮し、「温情主義」意識と「贖罪」意識の入り交じった奇妙な対韓配慮の一切を捨てた日本は、韓国には、どのような存在として映るのか。また、韓国は、そうした日本を相手にした「一切の手加減のないボクシング」に耐えられるのか。筆者にはそれを判断する材料はない。


       ≪「反日」冷徹に利用し国益を≫

       ただし、過日の竹島強行訪問に示された李大統領の対日姿勢は、少なくとも日本に対しては、そうした対韓姿勢の「次の局面」に向けた機会を期せずして提供したといえよう。そうであるとすれば、日本にとっては、李大統領が自国の「生煮えのナショナリズム」に耽溺(たんでき)しながら提供した「機会」に乗じて、どのように自らの対外政策展開に絡む態勢と論理を構築し、その利害を図っていくかを考えるのが、賢明であろう。


       李大統領が披露したような韓国の「反日」姿勢は、もはや真面目に相手にして「憤激」や「苛立(いらだ)たしさ」を感じるような代物ではなく、それを冷徹に利用して「利益」を手にしていくための材料でしかない。「反日」姿勢に反映された韓国の「生煮えのナショナリズム」の果てにあるものを背負うのは、韓国の人々に他ならない。それは、日本の人々の与(あずか)り知るところではないのである。

       日本のナショナリズムは、一時の変調はあったにせよ、福澤諭吉が象徴するように、「万国公法」と「文明」の尊重を大義にした明治期以来、洗練されたものであった。それが「生煮えのナショナリズム」に堕しないようにする努力は何時の世でも大事であろう。(さくらだ じゅん)












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