http://www.yomiuri.co.jp/main/news/20051031it01.htm
不正受給の介護報酬、25億円が未返還…読売調査
介護報酬を不正に受給して指定を取り消された介護サービス事業所が、報酬の返還に応じないケースが目立ち、少なくとも約25億円が未返還となっていることが、読売新聞社の介護保険全国自治体アンケートでわかった。
市町村が返還請求した総額の約7割にあたる。自治体は回収に努めているが、中には、破産したり、経営者が行方不明となっている事業所もあり、回収作業は難航している。
アンケートは今月上旬から下旬にかけ、全国の2215市町村(東京23区含む)を対象に実施。1836自治体から回答を得た。
このうち316自治体が、制度開始の2000年度から04年度末までに架空請求などで報酬を受け取って指定を取り消された延べ522事業所に対し、報酬の返還を請求。請求総額は約36億5200万円に上ったが、今年9月末時点で実際に返されたのは、約11億3900万円にとどまった。
残りの約25億1300万円の中には、返還見通しが立っているものも含まれるが、破産した事業所などもあり、全額返還は見込めない状況だ。
大阪府堺市では、返還請求した約1億3000万円のうち、約1億1400万円がまだ返ってきていない。このうち約7700万円について、現在、在宅介護事業所と係争中だ。事業所はすでに破産しており、経営者個人の家屋や土地も差し押さえたが、全額回収は難しい状況だ。
京都市でも裁判で争っているほか、提訴を検討している自治体もある。
大阪市では約1億円の返還請求に対し、約7500万円が未返還だ。このうち約1500万円は在宅介護事業所の自己破産により回収不能となり、すでに債権が消滅している。また、返還見通しのない債権を抱える自治体の中には、6000万円程度が回収不能というところもある。
債権は、事業所の返還能力が完全に失われた場合や、地方自治法に基づく時効(5年)により消滅する。不正に支払われた介護報酬は、介護保険財源の無駄遣いとなり、最終的に、国民の支払う保険料や税金に跳ね返る。
不正受給の手口は、提供していない介護を実施したかのように装ったり、無資格者がサービス提供したりといったケースが目立つ。
厚生労働省によると、指定取り消しを受けた事業所への返還請求額は、00年度に約3200万円だったが、03年度には約10億3700万円に急増。指定取り消しに至らない不正や、ミスも含めると、03年度の請求額は、約62億4500万円に達する。
不正受給の増加を受け、厚労省は今年6月に成立した改正介護保険法で、事業所の指定を6年間の更新制としたほか、指定を取り消された事業所については、5年間は再指定しない規定を盛り込んでいる。
(2005年10月31日3時0分 読売新聞)