[特定失踪者問題調査会NEWS 321](17.12.30)
荒木和博
先程NHKニュースで蓮池さん、地村さんからの情報として、彼らの
拉致に辛光洙や西新井事件に登場する朴などの工作員が関わっていたと
の報道がなされました。
彼らがいつ、どう話したのかはぼかしてありましたので、詳しくは分
かりませんが、一寸気になったので感じたことを書いておきたいと思い
ます。本来なら本人たちに確認すべきところですが、私が聞いても話し
てはくれないと思いますので、以下は乏しい情報をもとにした私の直感
に過ぎないことを予め申しあげておきます。
ニュースを見て感じたのは、辛光洙と朴では、あまりにも役者が揃い
過ぎているのではないかということです。だからといって証言を否定す
る材料にはならないのですが、それなら何で今ごろ話が出てきたのかと
いうことが気になります。
私は、少なくとも地村さん夫妻については、拉致された現場は小浜公
園の展望台ではないと思っています。蓮池さん夫妻にしても、分かって
いることは柏崎の図書館に自転車置場に自転車があったことだけです。
彼らはすべてを政府に話したと言っていますが、本人達の認識はどうで
あれ、限られた時間ですべてを話したなどということはあり得ません。
かつて韓国の安企部は1人の脱北者に対して何カ月もかけて聞き取りを
していました。どこの道がどうなっているということまで、精密に聞取
りをし、それを持っている情報と突き合せて嘘や過ちがないかを確認し
ていきました。それでも半年ぐらいしてから「そういえばこんなことが
あった」という話が出てくると聞いたことがあります。彼らの場合は拉
致被害者なのですから、持っている情報は1級のものであり、1日や2日で
すべての情報が出てくるなどということはありえません。今の程度で警
察が「全部聞いた」と言うのなら、警察には情報機関としての能力がほ
とんどないということを証明しているようなものです。
また、彼ら5人が帰国した当初、出てきた話は横田めぐみさんの話ばか
りでした。それは明らかに横田滋・早紀江夫妻を平壌に呼ぶため(そし
て、それで拉致問題を終わりにするため)の情報でした。彼らの本心が
どうであるかは別として、流されている情報は、誰かの意図によるもの
であることは間違いないと思います。
一昨年の末に平沢勝栄議員らが中国で北朝鮮の担当者と会い、その後
山崎拓氏も行って、5月の第二次訪朝とつながった流れは、明らかに北朝
鮮と日本側で拉致問題についての「落し所」(当時は帰国者5人の家族の
帰国)が定められ、そこに向って色々なものが動いたものでした。バッ
クには経済制裁実施をめぐって北朝鮮が危機感を持っていたことがあり
ました。そして、山本美保さんのDNA事件が起きたのは昨年3月です。
今回もそういう意味では非常に似たものを感じます。拉致と国交問題
を分離して日朝交渉を行う方式が決ったこと、西村議員が逮捕され、保
釈直後にこの情報が出たこと、さらに古川さんの認定訴訟での政府側の
時間稼ぎなど、色々なことをつなぎあわせてみると、犯人を今名前の出
ている人間だけに限定し、何らかの落し所を設定して、一気に国交正常
化への道筋を付けてしまうというシナリオが日朝両国の間でできている
のではないでしょうか。年末年始は急な事態には対応がしにくく、気が
ついたらすべてお膳立てができていたということになる可能性もないと
は言えません。
これまでの流れに照らして考えれば、おそらく北朝鮮は北朝鮮で、表
面上の強がりと逆に、かなり深刻な体制危機に陥っているのではないで
しょうか。それと今回のことはリンクしているはずです。したがって、
これが大きなヤマであることは間違いなく、ピンチでもありますが、逆
に使えば金正日体制を倒せる千載一遇のチャンスかも知れません。各位
におかれては今後の動きに十分注意されるようお願い致します。