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- 2021.04.19 Monday
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昭和55年の原敕晁(ただあき)さん=当時(43)=の拉致事件当時、北朝鮮の対外情報調査部のナンバー2だった姜海龍(カンヘリョン)元副部長は80歳代半ばで現在、北朝鮮で暮らしているとみられる。日本人拉致の複数チームの総括役だったとみられ、韓国人の映画監督と女優の夫妻の拉致や、大韓航空機爆破事件の実行犯、金賢姫(キムヒョンヒ)元死刑囚の選抜面接にも関与した疑いがあり、韓国治安当局筋からは“闇の元締”とみられていた。
1978(昭和53)年、夫で映画監督の申相玉(シンサンオク)さんとともに香港で拉致された韓国の女優、崔銀姫(チェウンヒ)さんの証言によれば、北朝鮮に拉致された直後、崔さんの監視や思想教育の総括を担当したのが姜元副部長だったという。
金正日総書記の信任も厚く、韓国治安機関は「夫妻の拉致は、映画マニアで崔さんのファンだった金総書記が強く願望し、姜元副部長が直接指揮した犯行」と指摘している。
87年11月の大韓航空機爆破事件の実行犯で、80年当時に同部工作員の候補生だった金賢姫元死刑囚は著書の中で自身の選抜面接官だったのが姜元副部長だったと記している。拉致被害者の蓮池薫さん(54)も姜元副部長について、工作機関の関連施設で「面識があった」と警察当局に証言したことが分かっている。
一方、姜元副部長がトップまで務めた対外情報調査部は金総書記直轄の工作機関で、現在は35号室と呼ばれる。日本人拉致事件関連では蓮池さん夫妻を拉致した実行犯として国際手配されたチェ・スンチョルら6容疑者が所属していたことが判明。ほかにも数々の違法工作を展開し韓国、日本のほか、米国や東南アジア各国などを対象として拉致や破壊活動、情報収集などを行っているという。
韓国治安機関筋は「金正日体制を維持するための特殊工作を企画、実行する。総書記直轄案件の実現は最優先の課題とされ、権限は強大だ」と指摘する。
菅直人前首相が今年6月、北朝鮮による日本人拉致問題に「断固として取り組む」と表明しながら、具体的な追加制裁の検討は指示していなかったこと が25日、分かった。野田佳彦首相にも追加制裁の検討は引き継がれておらず、拉致問題に対する民主党政権の姿勢が問われそうだ。
菅氏は6月10日の拉致問題対策本部で「(拉致は)主権の問題、人の命にかかわる問題であり、断固として取り組んでいく」と強調した。また、(1)北朝鮮との対話に向けた環境整備(2)国際的な連携強化(3)情報収集・分析の強化−などを指示した。
ところが、複数の外交筋によると、菅氏はその後、退陣に至るまで関係各省に追加制裁の検討を指示せず、「3カ月近くも言いっ放しで放置した。この件は菅氏から野田首相への引き継ぎ事項にも入っていない」という。
菅氏は昨年11月の北朝鮮による韓国・延坪島砲撃に際しても追加制裁の検討を口にしたが、政府は具体的な動きを見せていない。外務省幹部は「安易な発言は日本の立場を弱めるだけ」と指摘する。
野田首相は11日に首相官邸で拉致被害者家族と面会し「成果が挙がっておらず、深くおわびしなければならない」と陳謝した。13日の所信表明演説では「国 の責任においてすべての拉致被害者の一刻も早い帰国に向けて全力を尽くす」と強調したが、日朝間で新たな展開はまだない。
日朝間では平成20年8月に北朝鮮が拉致被害者の再調査委員会を設置することで合意したが、翌9月に設置先送りを通告し、以後は調査が棚上げされている。
拉致被害者の家族会らはそれから3年となる9月までに再調査を要請し応じない場合には、全面制裁するよう政府に呼びかけてきた。
田口八重子さん=拉致当時(22)=の兄で拉致被害者の家族会代表の飯塚繁雄さん(73)は「辞める直前に朝鮮学校の授業料無償化審査再開を指示したり、菅さんは最初から任期中に拉致問題を解決しようという気がなかったのだろう」と語る。
玄葉光一郎外相は24日、韓国の金星煥外交通商相とニューヨーク市内で初めて会談した。金氏は、日本の植民地時代の慰安婦問題の賠償請求権問題に 関する協議を始めるよう求めた。これに対して玄葉氏は「請求権問題は解決済み」とした上で「この問題が日韓関係に悪影響を及ぼさないようにしたい」と述べ た。
元慰安婦の賠償請求権をめぐっては8月、韓国の憲法裁判所が政府が具体的な措置を講じてこなかったことに違憲判断を示したことを受け、韓国側が協議を日本に提案していた。
両氏は、日韓双方が領有権を主張する竹島問題や、中断している日韓の経済連携協定(EPA)締結交渉についても議論した。日本外務省は竹島問題についての両者のやりとりを明らかにしていないが、互いに領有権を主張して平行線に終わったとみられる。(共同)
玄葉光一郎外相は24日、韓国の金星煥外交通商相とニューヨーク市内で初めて会談した。金氏は、日本の植民地時代の慰安婦問題の賠償請求権問題に 関する協議を始めるよう求めた。これに対して玄葉氏は「請求権問題は解決済み」とした上で「この問題が日韓関係に悪影響を及ぼさないようにしたい」と述べ た。
元慰安婦の賠償請求権をめぐっては8月、韓国の憲法裁判所が政府が具体的な措置を講じてこなかったことに違憲判断を示したことを受け、韓国側が協議を日本に提案していた。
両氏は、日韓双方が領有権を主張する竹島問題や、中断している日韓の経済連携協定(EPA)締結交渉についても議論した。日本外務省は竹島問題についての両者のやりとりを明らかにしていないが、互いに領有権を主張して平行線に終わったとみられる。(共同)
東日本大震災で被災した外国人学校などを対象に国が予算補助を行う施設復旧事業で、文部科学省に被害状況を提出した12校のうち7校が北朝鮮や在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の強い影響下にある朝鮮学校だったことが23日、同省が作成した文書で明らかになった。朝鮮学校をめぐっては、菅直人前首相が退陣直前に高校無償化の審査手続きの再開を指示したことに批判の声があがっている。北朝鮮系の施設に対する国費支出が問題視されているなかで、国会でも大きな議論となりそうだ。
文科省に被害状況を報告した7校の朝鮮学校には、宮城、福島、千葉3県に加え東京都の学校も含まれている。12校のうち実際に申請したり、申請の手続きを進めたりしている学校は6校。同省は「審査に影響が出る」として詳細を明らかにしないが、6校のうち4校が朝鮮学校だという。
同事業は、校舎の新築・補修、教材や机など設備の修理・新規購入など震災からの復旧に必要な経費の2分の1を国が助成。平成23年度第1次補正予算に17億円が計上されている。
事業は「専修学校および各種学校」が対象とされているが、各種学校は外国人学校に限定されており、この点を自民党議員らが問題視している。外国人学校以外の各種学校に対する復旧支援事業は、10月下旬に提出予定の第3次補正予算案で措置が検討される見通しとなっているからだ。
14日の自民党文部科学部会では「日本人の子弟が多く通う各種学校よりも朝鮮総連系の学校が優先されることになる。筋が通らない」などと批判が噴出。文科省側は「阪神・淡路大震災の制度に準拠しただけだ」と説明したが、出席議員は「当時とは事態が違う。(北朝鮮による)拉致の事実も明確でなく、高校無償化問題もなかった」と反論した。
義家弘介文部科学部会長代理は産経新聞の取材に対し、「ピンポイントで朝鮮学校に予算をつけることになる。高校無償化の手続きを停止したことの実質的な代替措置だ」と批判を強めている。
〈福島〉北朝鮮による拉致被害者の帰国運動を続ける「救う会ふくしま」は19日、福島市内で「県民大集会」を行い、横田滋、早紀江さん夫妻らが講演した。
滋さんは「国連総会に出席する野田(佳彦)首相は拉致問題をしっかり訴えてほしい。1日も早く日朝交渉を再開し、一歩でも前進させてほしい」と求めた。
早紀江さんは「人命が危機にあるとき、政治にかかわる人の心がどう動くかが問われる。拉致、震災ともに国の動きの遅さを感じている」と憤りをみせた。
「救う会ふくしま」の菅野重信代表も「福島は大変な状況だが北朝鮮の国家犯罪を脇に置けない。日本人の拉致への関心が薄れることを期待する金正日に応えるわけにいかない」と訴えた。
約300人の参加者が最後に「ふるさと」を熱唱。原発事故の避難者にも思いを重ねながら、拉致問題の早期解決を強く誓った。
金正日総書記は、北朝鮮の建国記念日である9日、息子の金正恩氏を伴って故金日成主席の遺体が安置されている錦繍山記念宮殿を参拝した。金総書記がこの日に墓参するのは13年ぶり。3代世襲が近づき、「金王朝」を強調した格好だが、このところの金総書記の行動や指示は異例続きだ。特に専門家が注目するのは「夫人」と「息子」への待遇。そこには世襲準備の内実と健康不安への独裁者の心境がにじみ出ている。(久保田るり子)
ファーストレディー、キム・オク女史の登場
金正日総書記は5月の訪中、8月の訪露、訪中に40代後半の女性で現在の夫人とみられるキム・オク女史を同伴した。キム・オク氏は、この訪問中、移動中の車の後部座席に金総書記の横に座っている姿や、晩餐(ばんさん)会に出席している場面、ロシアで訪問した発電所では座っている金総書記のすぐ後ろから寄り添うように、説明を聞いている姿などが海外メディアに捉えられた。
「秘書」と説明するにはあまりにも近すぎる距離と親密な態度で、事実上の夫人としての振る舞い。しかし、この様子は、北朝鮮の公営メディアには全く出ていない。キム・オク氏のすべてがカットされた。
専門家によると、金総書記の場合、寝室にも出入りできる特権のことを『鍵をあける権利』といい、病で倒れた場合にも金総書記の代理を務める権利のことを指すという。
現在『鍵をあける権利』を持つのは2人とみられている。実妹の金敬姫氏と夫人役のキム・オク氏だ。
「彼女ら2人は、金正日総書記の発言を修正することも許されている。とくにキム・オク氏は『パンマル』(近しいものだけの使える言葉遣い)も許されており、夫人であり、看護婦であり、通訳の役割も担っている」(情報筋)という。
キム・オク氏は1964年生まれ。平壌音楽舞踊大学出身で旺載山軽音楽団のピアニスト時代に金総書記の目に留まり、80年代から秘書室課長として金総書記の個人秘書となったとされる。90年代に平壌で出版された写真集にその姿が捉えられ、2000年、趙明禄・前国防委員会第1副委員長(故人)が訪米したときに同行して注目された。
7年前に高英姫夫人が死去したあとは事実上の夫人となったが、これまで対外的な夫人の処遇を受けていなかった。2006年の訪中、昨年の訪中、今年の訪中訪露に同行。5月の訪中からは外国メディアのカメラの前にもしばしば登場している。
「海外での公開状態は異例だ。理由はひとつしかない。金総書記が望んだ以外にはありえない。補佐が必要であり、心身ともに一人での行動に不安がある−ということだ」と専門家は指摘する。
息子を支える軍隊への「憂慮」と「現実」
9日、金父子は金日成広場で軍事パレードの閲兵を行った。そろっての登壇は昨年10月の党創建記念日以来2度目。父子の姿を軍部や国内に印象付けた。
この日の軍事パレードは民兵組織「労農赤衛隊」。昨年10月の朝鮮人民軍、労農赤衛隊の合同パレードに比べ、戦車など装備展示はなかった。
「一言でいえば安上がりパレードだ。人民軍が参加しないため兵器を動かす必要がないからだ。建国63周年という中途半端な年に、それでもパレードを強行したのは、金正恩の権威付け以外のなにものでもないが、昨秋の正恩登場以来の北朝鮮の軍関連行事は、すべて“正恩シフト”で動いている」(北朝鮮の軍事に詳しい恵谷治・早稲田大学教授)
しかし世襲で3代目に引き継ぐ朝鮮人民軍の実情は困窮一色だ。特に通常兵器は老朽化して久しく、部品がない。兵力も食糧不足で体格も維持できない兵士の士気問題など、経済難によるじり貧を解決するめどは立っていない。
訪中訪露で金総書記は「中露に軍事協力を求めた」とされる。韓国メディアは14日、ロシア軍関係者の話として、「北朝鮮が来年、ロシア軍との合同軍事演習を予定している」(韓国紙中央日報)と報じた。
米韓合同軍事演習が繰り返し行われるなか、これまでの核・ミサイル開発に加えて、通常兵力でも中露との関係強化に乗り出した金総書記。日米韓の枠組みに対抗する朝中露関係の立て直しに自らが乗り出し、異例な公開活動を続けている。
権威付けの季節
9日、朝鮮中央通信などの軍事パレード報道で、三男、金正恩氏の党内序列が「3位」であることが確認された。1位金正日総書記、2位金永南最高人民会議常任委員長に次ぐ地位だ。金永南氏は「元首」の扱いで名誉職であるため、実際はナンバー2に位置付けられたことになる。
来春の4月15日金日成生誕100周年に向け、正恩氏の権威付けは最終ラウンド。偶像化や神話作りなどの伝統的な宣伝工作に加え、実力を示す軍事行動の兆候に関係各国は神経をとがらせる。金総書記の「指令」は予測不能だ。
金正日総書記は、北朝鮮の建国記念日である9日、息子の金正恩氏を伴って故金日成主席の遺体が安置されている錦繍山記念宮殿を参拝した。金総書記がこの日に墓参するのは13年ぶり。3代世襲が近づき、「金王朝」を強調した格好だが、このところの金総書記の行動や指示は異例続きだ。特に専門家が注目するのは「夫人」と「息子」への待遇。そこには世襲準備の内実と健康不安への独裁者の心境がにじみ出ている。(久保田るり子)
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金正日総書記は5月の訪中、8月の訪露、訪中に40代後半の女性で現在の夫人とみられるキム・オク女史を同伴した。キム・オク氏は、この訪問中、移動中の車の後部座席に金総書記の横に座っている姿や、晩餐(ばんさん)会に出席している場面、ロシアで訪問した発電所では座っている金総書記のすぐ後ろから寄り添うように、説明を聞いている姿などが海外メディアに捉えられた。
「秘書」と説明するにはあまりにも近すぎる距離と親密な態度で、事実上の夫人としての振る舞い。しかし、この様子は、北朝鮮の公営メディアには全く出ていない。キム・オク氏のすべてがカットされた。
専門家によると、金総書記の場合、寝室にも出入りできる特権のことを『鍵をあける権利』といい、病で倒れた場合にも金総書記の代理を務める権利のことを指すという。
現在『鍵をあける権利』を持つのは2人とみられている。実妹の金敬姫氏と夫人役のキム・オク氏だ。
「彼女ら2人は、金正日総書記の発言を修正することも許されている。とくにキム・オク氏は『パンマル』(近しいものだけの使える言葉遣い)も許されており、夫人であり、看護婦であり、通訳の役割も担っている」(情報筋)という。
キム・オク氏は1964年生まれ。平壌音楽舞踊大学出身で旺載山軽音楽団のピアニスト時代に金総書記の目に留まり、80年代から秘書室課長として金総書記の個人秘書となったとされる。90年代に平壌で出版された写真集にその姿が捉えられ、2000年、趙明禄・前国防委員会第1副委員長(故人)が訪米したときに同行して注目された。
7年前に高英姫夫人が死去したあとは事実上の夫人となったが、これまで対外的な夫人の処遇を受けていなかった。2006年の訪中、昨年の訪中、今年の訪中訪露に同行。5月の訪中からは外国メディアのカメラの前にもしばしば登場している。
「海外での公開状態は異例だ。理由はひとつしかない。金総書記が望んだ以外にはありえない。補佐が必要であり、心身ともに一人での行動に不安がある−ということだ」と専門家は指摘する。
息子を支える軍隊への「憂慮」と「現実」
9日、金父子は金日成広場で軍事パレードの閲兵を行った。そろっての登壇は昨年10月の党創建記念日以来2度目。父子の姿を軍部や国内に印象付けた。
この日の軍事パレードは民兵組織「労農赤衛隊」。昨年10月の朝鮮人民軍、労農赤衛隊の合同パレードに比べ、戦車など装備展示はなかった。
「一言でいえば安上がりパレードだ。人民軍が参加しないため兵器を動かす必要がないからだ。建国63周年という中途半端な年に、それでもパレードを強行したのは、金正恩の権威付け以外のなにものでもないが、昨秋の正恩登場以来の北朝鮮の軍関連行事は、すべて“正恩シフト”で動いている」(北朝鮮の軍事に詳しい恵谷治・早稲田大学教授)
しかし世襲で3代目に引き継ぐ朝鮮人民軍の実情は困窮一色だ。特に通常兵器は老朽化して久しく、部品がない。兵力も食糧不足で体格も維持できない兵士の士気問題など、経済難によるじり貧を解決するめどは立っていない。
訪中訪露で金総書記は「中露に軍事協力を求めた」とされる。韓国メディアは14日、ロシア軍関係者の話として、「北朝鮮が来年、ロシア軍との合同軍事演習を予定している」(韓国紙中央日報)と報じた。
米韓合同軍事演習が繰り返し行われるなか、これまでの核・ミサイル開発に加えて、通常兵力でも中露との関係強化に乗り出した金総書記。日米韓の枠組みに対抗する朝中露関係の立て直しに自らが乗り出し、異例な公開活動を続けている。
権威付けの季節
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来春の4月15日金日成生誕100周年に向け、正恩氏の権威付けは最終ラウンド。偶像化や神話作りなどの伝統的な宣伝工作に加え、実力を示す軍事行動の兆候に関係各国は神経をとがらせる。金総書記の「指令」は予測不能だ。
金正日総書記は、北朝鮮の建国記念日である9日、息子の金正恩氏を伴って故金日成主席の遺体が安置されている錦繍山記念宮殿を参拝した。金総書記がこの日に墓参するのは13年ぶり。3代世襲が近づき、「金王朝」を強調した格好だが、このところの金総書記の行動や指示は異例続きだ。特に専門家が注目するのは「夫人」と「息子」への待遇。そこには世襲準備の内実と健康不安への独裁者の心境がにじみ出ている。(久保田るり子)
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専門家によると、金総書記の場合、寝室にも出入りできる特権のことを『鍵をあける権利』といい、病で倒れた場合にも金総書記の代理を務める権利のことを指すという。
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「彼女ら2人は、金正日総書記の発言を修正することも許されている。とくにキム・オク氏は『パンマル』(近しいものだけの使える言葉遣い)も許されており、夫人であり、看護婦であり、通訳の役割も担っている」(情報筋)という。
キム・オク氏は1964年生まれ。平壌音楽舞踊大学出身で旺載山軽音楽団のピアニスト時代に金総書記の目に留まり、80年代から秘書室課長として金総書記の個人秘書となったとされる。90年代に平壌で出版された写真集にその姿が捉えられ、2000年、趙明禄・前国防委員会第1副委員長(故人)が訪米したときに同行して注目された。
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「海外での公開状態は異例だ。理由はひとつしかない。金総書記が望んだ以外にはありえない。補佐が必要であり、心身ともに一人での行動に不安がある−ということだ」と専門家は指摘する。
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「秘書」と説明するにはあまりにも近すぎる距離と親密な態度で、事実上の夫人としての振る舞い。しかし、この様子は、北朝鮮の公営メディアには全く出ていない。キム・オク氏のすべてがカットされた。
専門家によると、金総書記の場合、寝室にも出入りできる特権のことを『鍵をあける権利』といい、病で倒れた場合にも金総書記の代理を務める権利のことを指すという。
現在『鍵をあける権利』を持つのは2人とみられている。実妹の金敬姫氏と夫人役のキム・オク氏だ。
「彼女ら2人は、金正日総書記の発言を修正することも許されている。とくにキム・オク氏は『パンマル』(近しいものだけの使える言葉遣い)も許されており、夫人であり、看護婦であり、通訳の役割も担っている」(情報筋)という。
キム・オク氏は1964年生まれ。平壌音楽舞踊大学出身で旺載山軽音楽団のピアニスト時代に金総書記の目に留まり、80年代から秘書室課長として金総書記の個人秘書となったとされる。90年代に平壌で出版された写真集にその姿が捉えられ、2000年、趙明禄・前国防委員会第1副委員長(故人)が訪米したときに同行して注目された。
7年前に高英姫夫人が死去したあとは事実上の夫人となったが、これまで対外的な夫人の処遇を受けていなかった。2006年の訪中、昨年の訪中、今年の訪中訪露に同行。5月の訪中からは外国メディアのカメラの前にもしばしば登場している。
「海外での公開状態は異例だ。理由はひとつしかない。金総書記が望んだ以外にはありえない。補佐が必要であり、心身ともに一人での行動に不安がある−ということだ」と専門家は指摘する。
息子を支える軍隊への「憂慮」と「現実」
9日、金父子は金日成広場で軍事パレードの閲兵を行った。そろっての登壇は昨年10月の党創建記念日以来2度目。父子の姿を軍部や国内に印象付けた。
この日の軍事パレードは民兵組織「労農赤衛隊」。昨年10月の朝鮮人民軍、労農赤衛隊の合同パレードに比べ、戦車など装備展示はなかった。
「一言でいえば安上がりパレードだ。人民軍が参加しないため兵器を動かす必要がないからだ。建国63周年という中途半端な年に、それでもパレードを強行したのは、金正恩の権威付け以外のなにものでもないが、昨秋の正恩登場以来の北朝鮮の軍関連行事は、すべて“正恩シフト”で動いている」(北朝鮮の軍事に詳しい恵谷治・早稲田大学教授)
しかし世襲で3代目に引き継ぐ朝鮮人民軍の実情は困窮一色だ。特に通常兵器は老朽化して久しく、部品がない。兵力も食糧不足で体格も維持できない兵士の士気問題など、経済難によるじり貧を解決するめどは立っていない。
訪中訪露で金総書記は「中露に軍事協力を求めた」とされる。韓国メディアは14日、ロシア軍関係者の話として、「北朝鮮が来年、ロシア軍との合同軍事演習を予定している」(韓国紙中央日報)と報じた。
米韓合同軍事演習が繰り返し行われるなか、これまでの核・ミサイル開発に加えて、通常兵力でも中露との関係強化に乗り出した金総書記。日米韓の枠組みに対抗する朝中露関係の立て直しに自らが乗り出し、異例な公開活動を続けている。
権威付けの季節
9日、朝鮮中央通信などの軍事パレード報道で、三男、金正恩氏の党内序列が「3位」であることが確認された。1位金正日総書記、2位金永南最高人民会議常任委員長に次ぐ地位だ。金永南氏は「元首」の扱いで名誉職であるため、実際はナンバー2に位置付けられたことになる。
来春の4月15日金日成生誕100周年に向け、正恩氏の権威付けは最終ラウンド。偶像化や神話作りなどの伝統的な宣伝工作に加え、実力を示す軍事行動の兆候に関係各国は神経をとがらせる。金総書記の「指令」は予測不能だ。