韓国青瓦台(大統領府)のコ・ミンジョン報道官は24日(日本時間)に行われた米韓首脳会談について、「両首脳は韓米両国が北との関係を転換し、70年近く続いてきた敵対関係を終息し、朝鮮半島の恒久的平和体制を構築する意志を再確認した」と発表した。

 

これについて、韓国紙・中央日報が26日付で、「転換」という表現について問題視している。「通常の関係改善(improve)の代わりに関係転換(transformation)という表現を使ったが、ここには北朝鮮との関係を根本的に変化させるという積極的な意志が込められているということだ。ただ、ホワイトハウスの発表には「transformation」という表現が含まれていない」という。

 

またか、と思わざるを得ない。外交での少ない成果を、誇大な表現や解釈でかさ上げするのは文在寅政権の常とう手段だ。たとえば文在寅氏は7月2日の閣議で、次のように述べている。

 

「南北に続いて米朝も、文書上の署名ではないが、事実上の敵対関係の終息と新しい平和時代の本格的な始まりを宣言したと言える」

 

6月30日に板門店(パンムンジョム)で行われた事実上の米朝首脳会談を巡っての発言だ。トランプ米大統領が米国の首脳として、初めて北朝鮮の地を踏んだことなどを高く評価したわけだ。ところがこれに対し、米国側から否定する声が出たのだ。

 

また日韓軍事情報包括保護協定の破棄を巡っては、米国の反発に驚いた文在寅政権は逆に、ダメージの矮小化に走った。しかしこれが米国の怒りの火に油を注ぐ形となり、米国をして外交慣例まで破らせ、異例の「文在寅名指し」批判を行わせる結果につながった。

 

(参考記事:「そんなの嘘だ」…米国政府「文在寅」名指しして不満爆発

 

方、韓国の国家情報院は24日、「朝鮮の金正恩国務委員長が11月の釜山(プサン)韓国・ASEAN特別首脳会議に出席する可能性がある」と国会情報委員会に報告している。

 

これについては、「本当かよ!?」とツっこまずにはいられない。南北関係は冷え切っており、仮に金正日党委員長が文在寅氏に親書を送ってきただけでも韓国には「大成果」と言える状況だ。米朝対話が進展した場合という条件付きとは言え、いきなり釜山訪問とは、あまりに飛躍し過ぎている。

 

文政権はチョ・グク法相をめぐる検察の捜査拡大により窮地に追い込まれている。金正恩氏の訪韓で支持率を浮揚させ、来年4月の総選挙での与党の勝利につなげたい思惑は手に取るようにわかる。

 

しかしそもそも、本当に金正恩氏が来ると思うなら、現時点では極秘で準備を進めるべき案件だ。隠しもせず公けにしてしまうのは、とうてい現実味がないことを政権も知っているからであり、つまりは今を乗り切るためだけの、「言葉だけ」の空虚なパフォーマンスに過ぎないということだ。