朴槿恵(パク・クネ)大統領率いる韓国が、在韓米軍撤退の影におびえている。朝鮮半島有事の際の「作戦統制権」を米 軍から韓国軍に移管する時期について、韓国側が延期を求めているのに対し、米側がなかなか「イエス」と言わないからだ。「米国が韓国防衛に消極的だ」とみ て、北朝鮮が挑発行動に出る可能性もあるが、日本に助けを求めるのはプライドが許さない。半ばパニック状態に陥った政権与党からは、破れかぶれの核武装論 まで噴出している。

 「米国は引き続き、韓国に賭ける。(韓国が)米国の反対側(=中国)に賭けるのは良い賭けではない」

 聯合ニュースは6日、朴氏と会談したバイデン米副大統領がこう語ったと報じ、「米国内の一部に『相対的に米韓は距離が生じている』との認識が背景にある」と分析した。

 韓国の安全保障政策の根幹である米韓同盟にすきま風が吹いているという衝撃的な報道だけに、韓国政府は「通訳が間違えた」(外務省)とあわてて否定した。

 それでも韓国メディアは「韓米日共助を通じて中国を牽制しようとする米国の政策に、韓国が積極的に協力してほしいと促した」(ハンギョレ新聞)などと、一斉にバイデン発言を報じた。

 韓国政府や同国メディアがバイデン発言に過敏になる背景には、統制権問題がある。

 韓国軍の戦時作戦統制権は、朝鮮戦争勃発直後から在韓米軍司令官が握っている。親北朝鮮色が強かった盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権は2005年、12年までに韓国に移管するよう要求。当時のブッシュ米政権は「09年に移管を前倒しする」と逆提案してきた。

  これに驚いたのが、言い出しっぺの盧政権。米軍が韓国への関与を低下させれば、北朝鮮がその間隙を狙いかねない。1970年代にカーター米大統領が「在韓 米軍撤退論」を掲げたことは、今も韓国政府のトラウマとなっている。盧政権は恥も外聞もなく12年4月の移管に落ち着かせた。

 その後、北朝鮮の核開発と軍事挑発が続き、韓国では「米国から見捨てられる」という恐怖が一層強まった。親米の李明博(イ・ミョンバク)前政権は米国に要請して、戦時作戦統制権の移管を15年末に延期させたが、朴政権はさらなる延長を求めているのだ。

 これに対し、米政府は予定通りの移管を主張したままだ。

  10月2日の米韓国防相会談では、移管条件について実務協議を行うことで合意したが、ヘーゲル米国防長官は記者会見で「われわれは何にも合意しておらず、 今後も話し合いを続ける」と述べ、移管延長の言質を与えなかった。今回のバイデン氏訪韓でも、移管問題について進展はなかった。

 そればかりか、米政府は「自国の防衛に責任を取りたがらない韓国の姿勢にイライラし始めている」(米紙ワシントン・ポスト)という。

 こうしたなか、韓国の政権与党から信じがたい極論も飛び出している。

 「核兵器には核兵器で対抗しなければ平和を維持することはできない」

 韓国国会で先月20日、与党・セヌリ党の鄭夢準(チョン・モンジュン)議員がこう訴えた。

 鄭氏は現代グループの御曹司で、セヌリ党が党名を変える前のハンナラ党時代には党代表を務めたこともある韓国政界の大物。同僚議員も「北朝鮮の核の恐怖に対抗する平和的な核を持つ以外にない」と追随した。

 だが、核拡散防止条約(NPT)の締結国であり、北朝鮮に核開発計画の放棄を求める韓国が核武装すれば、国際社会から孤立するのは必至。それでも、こんな極論が飛び出す背景には、米韓同盟をめぐる不安がある。

 夕刊フジで「新悪韓論」を連載するジャーナリストの室谷克実氏は「韓国は自分の能力に自信がない。兵器はオンボロだし、兵士の士気も低下している。だから米国に頼るしかないが、米国が本当に韓国を助けてくれるか、信頼できないでいる」と解説する。

 それにしても、オバマ米政権は、アジア太平洋に軍事力の重心を移す「リバランス」を掲げているのに、なぜ韓国側の“懇願”を受け入れないのか。そのカギは、日韓関係にありそうだ。

 米韓両国が統制権移管に合意した06年10月当時、ブッシュ政権で国家安全保障会議(NSC)アジア部長を務めた、ビクター・チャ氏は自著で、韓国が「米国から見捨てられる」恐怖が強まれば、日韓関係は良好になると指摘している。

 つまり、日米韓3カ国の連携を強化するうえで、統制権移管はうってつけの妙薬というわけだ。

 ところが、「反日妄想」にとらわれている韓国政界は、本来は韓国の安全保障強化にもつながる安倍晋三政権による集団的自衛権の行使容認を、「軍国主義化につながる」との珍説で警戒感を隠さない。他に頼る術もなく、極端な核武装論や、中国への接近など迷走を続けている。

 自業自得といえばそれまでだが、朝鮮半島の混乱は日本への波及が避けられない。韓国が反日ボケから目覚める日はいつになるのか。